吹奏楽部の子どもでちょっと小柄な弱々しい不器用な小さい女の子がいました。
彼女のクラスの音楽を教えていたのでよく知ってましたが、クラスでもちょっと弱い立場でいつ不登校になってしまってもおかしくありませんでした。
練習にも毎回は出られなくて、お母さんが楽器をリースで借りてくれたものの、あんまりお母さんも面倒見てない感じでしたし、上手にならなくて、チューニングの音をロングトーンで吹けたくらい。
曲なんかとても吹けるような様子ではありませんでした。
それなのにあの子は「部活楽しい‼」
ってニコッと笑って、言ったのです‼
その時、私はコンクールで勝ちたい勝ちたいってそればかりでした。
この時、ハッとしたんですよ。
もしもコンクールで勝つことばかり考えていたら、この子は排除されちゃう。
マズイと・・・
それでね。
この子がいない時に部活の三年生だけ集めて、(全員だったかも)話をしたんです。
「お前たちには大変、申し訳ないけど、あの子は『部活が楽しい‼』って言ってくれた。
吹奏楽部が無かったら、学校に来られなくなってたかもしれない。
だから、支えてやって欲しい。
もしも、あの子がうちの部にいられなくなるようならば、それは多分、うちの部の雰囲気がどこかおかしくなってる。
だから、あの子が安心していられるのなら、それは上手くいってる。
あの子はうちの部の宝物。
守ってやって欲しい。」
土下座して頼みました。
その後、部長を研究室に呼んで、
「お前は同じパートで、同じクラスだから、一番迷惑をかける。俺のワガママで辛い思いをさせてしまうかもしれないけど、お願いだ‼」
って頭を下げました。
この部長は辛い思いをしていたことがあったんですが、彼女ならば、任せてよいと私は判断しました。
それに彼女に頼るしか、あの子を守ることは出来ませんでした。
この部長のことは別に書きます。
勘違いしてたら、悪かったんですが、多分、納得してくれたと思うんです。
この部長と部員たちのおかげで、あの子は学校にも部活にも来られました。
私はまたワガママで、この子をコンクールに出しました。
「先生、私、吹けません。」
「チューニングの音をロングトーン出来るよね?」
「お前は曲の最後のロングトーン、そこだけでいいから、頑張りなさい‼」
ってね。
だから、コンクールは県大会に行ったものの、隣の学校のK先生が「金賞取れるかもよ」と言ってくれてたのですが、私は本気にしてなかったのとそれより大事なものがあったのと、とても県代表にはなれないこともわかってましたから、県大会出場で満足してました。
やはり銀賞あとでわかったんですが、代表にはやはり届きそうにありませんでしたが、県大会でかなり上位で、あと2~3点で、もうちょっとでダメ金でした。
でもOK‼
あの子は無事に卒業して、進学しました。
だいぶ経って、ラーメン屋でパートで働いてる彼女のお母さんに会いました。
相変わらず、せかせかしていましたが、彼女はバスガイドしてると聞きました。
嬉しかったですね。
本当の宝物ってなんでしょうね。
教育ってなんでしょうね。
大変、難しいです。
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